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福岡地方裁判所 平成5年(行ウ)8号 判決

主文

一  本件訴を却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者双方の求める裁判及び主張は、それぞれ別紙請求の趣旨及び原因並びに答弁書記載のとおりである。

第二  証拠

一  原告

1  甲第一ないし五号証

2  乙号各証の成立は認める。

二  被告

1  乙第一ないし三号証

2  甲号各証の成立は認める。

理由

一  成立に争いのない甲第一ないし第四号証によれば、被告が訴外社団法人a協会九州会に対し、法人市民税を申告納付するよう通知したこと、原告は、福岡市の住民であり、平成五年三月三日、この通知の取消しを求めて、地方自治法(以下、「法」という。)第二四二条第一項に基づき、福岡市監査委員に対し住民監査請求をしたこと、同月一七日、右監査請求が、右通知により市が損害を被ることはないので住民監査請求の対象とはならないとの理由で却下されたこと、右却下の決定に対し、原告が法第二四二条の二第一項に基づき、本件訴えを提起したことが認められる。

二  ところで、法第二四二条の二第一項は、普通地方公共団体の住民が「前条第一項の規定による請求をした場合」、つまり住民監査請求をした場合に限って、住民訴訟を提起することを認めている。このような監査請求前置主義を採用したのは、住民監査請求で問題とされる違法不当な行為が行政権の内部における事柄であるから、まず行政内部における自主的解決を求めるべきであり、それが事柄の専門的・技術的性質からも適切な場合が多いこと等の理由のためである。そうであれば、監査請求が監査の要件を欠く不適法なものとして却下されると、監査請求前置の目的である行政権の内部における実質的審査を受けていないことになるから、監査請求前置の要件は充足されないことになると解される。そして、本件原告の前記監査請求も、福岡市監査委員により不適法と判断されて、実質的審査を受けることなく却下されているので、この判断が適法であれば、右要件は充足されず、訴えの提起は許されないこととなる。

三  そこで、福岡市監査委員がした右却下の判断の当否について、検討する。

1  住民監査請求の制度は、普通地方公共団体の財政の腐敗防止を図り、住民全体の利益を確保する見地から、当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実について、その監査と予防、是正等の措置とを監査委員に請求する権能を住民に与えたものであって、住民訴訟の前置手続として、まず当該地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は怠る事実の違法、不当を当該地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするものであると解される。そのため、監査の対象となる行為等は、地方公共団体に積極消極の損害を与えひいては住民全体の利益に反するものでなければならないというべきである。

2  ところが、原告の前記監査請求は、人格なき社団に対してなされた法人市民税の申告納付の通知の取消しを求めたものであって、右通知につき違法、不当な事由があるとしても、それが地方公共団体である市に損害をもたらすような関係にはないことが明らかであって住民監査請求の対象となる行為等には該当しないというほかはない。

3  したがって、原告の監査請求は、監査の対象とならない行為について監査を求めた不適法なものであり、これを却下した福岡市監査委員の判断は適法であったといわざるをえない。

四  よって、原告の本訴請求は、住民訴訟の要件たる適法な監査請求を前置しておらず、不適法なものであるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用したうえ、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川本隆 裁判官 永松健幹 裁判官 桑原直子)

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